くもりガラスの向こう側。

 いまから読む。
 読んだ。
 ちまたで言われてたほど酷いとは思わなかった。瞳子出てこないし、ふたりの仲に進展もないけれど、ようやく祐巳が本気になった感じなので。
 回り道かもしれないけれど、一段ずつ着実に登っている感覚はあるので、それほど引き延ばされた感はない。それ以前の段階の方がはるかに引き延ばし感があったし。
 瞳子祐巳が姉妹になる課程を上下巻、もしくは上中下巻での構成なんだと思えば、こんなもんだと思う。たぶん次で決着だろうし。
 それよりも祥子の許嫁問題があんなにあっさり決着した方が問題。あれで良しとするとは肩透かしも良いところだ。作者はスルーの天災(誤字に非ず)なので自分から物語を破壊するのである。
 志摩子の兄といい、可南子の問題といい、今回といい、マリみてから暗い部分がどんどんそぎ落とされている。それは自ら物語の奥行きを狭めていっているだけだと判らないのだろうか。
 聖と久保栞の物語のように、チョコレートコートのように、マリみての世界ではすべてが上手く行くわけではないとかつて作者は示していたはずなのに。
 やはりこの作者は短編の方が巧い。本質的に長編向きではないのだろう。残念ながら。