ほろりとくるのよ

 五月雨は露か涙か不如帰我が名をあげよ雲の上まで
                        -足利義輝

 散りぬべき時知りてこそ世の中の花も花なれ人も人なれ
                         -細川ガラシャ

 この世をばどりゃお暇(いとま)に線香の煙とともに 灰(はい)左様なら
                                -十返舎一九

Logicoolのマウス

 VX-RのころからVX-nano、M905…とLogicoolのマウスを使い続けているんですが、Logicoolのマウスの持病とも言えるチャタリングにはいつも悩まされ続けています。
 幸いなのはいつも保証期間内に起こることで、交換もしてもらえるんですが、なんというか、それなりに高いものなのでもう少ししっかり作れないのかなぁと思うわけです。
 使い勝手が良いだけにもったいないなぁと。

 あとゲーミングノートPCを付き合いで購入したんですが、17インチノートってこんなに重いのね…。 

通勤初心者

 四十路を迎えるにあたって体力の低下をひしひしと感じるこのごろです。
 なにぶん運動をまったくしてないのでコレはいかんなーと。

 それで車通勤をやめて自転車に変えてみたわけです。
 ちなみに私、自転車には乗れますが通学で使ったことはありません。小中学校とも徒歩ですぐでしたし、高校は逆に遠いのでスクールバスを利用してました。
 大学だと原付のあと軽自動車、就職後はずっとクルマでした。
 思い返してみると自分の自転車というものにまったく縁がなかったです。いちおう持ってはいたんですがママチャリを。

 それでまあ通勤ならコレでしょうと自転車屋で勧められたクロスバイクなるものを購入しました。
 初心者というか入門者には最適とのことでGIANTというメーカーです。乗ってみてびっくりしました。軽いんですね。もっと重たいイメージがあったんですが。
 
 いろいろいじり回せるのもいいですね。自転車にカラダを合わせるのではなく、自転車の方が合わせてくれるというのか。最適な乗車ポジションを見つけるのも面白い。
 まだ始めたばかりですが、いまは楽しくてしょうがありません。

いかん、書き方を忘れた…

あけましておめでとうございます。ってだれもみてないだろうけど。
最近は子供とダンボール戦機のクリアを競ったり、絶対無理な条件で馬人参のつもりでWiiUの約束をしたら買わないといけないハメになったりと、まあこれがリア充か…。なんかちがうような…?

まあそんな感じです。
Facebookはなんか面倒そうなので、こっちが落ち着きますね。

某所に投稿したもの


前日譚、その後っぽいもの。



「そんなことより、もう六時過ぎてんじゃん。御飯作って」
「え? 俺が作んの?」

 なに当たり前のように言ってんの、おまえ?

「とーぜんでしょ? それともなに? 妹の手料理が食べたかったわけ?」

 ふむ。桐乃が作った料理か。なかなかに興味深いね。
 そもそも妹に限らず、女性が愛情(←ここ重要)込めて作ってくれたものなら食べたくない男なんてこの世にいるのだろうか。――お袋は除くが。
 とはいえこの妹が料理をしたとこなんかこれまで見たことがない。その腕前は推して知るべしだろう。愛情なんて欠片も含まれないだろうしな。

「冗談じゃねえ」
「あっそ。じゃあほら、早く、作って」
「しょうがねえな。炒飯でいいか?」
「ばっかじゃないの、そんなカロリー高いの食べられるわけないじゃん。あたしって読モなんだよ? 読者モデル。分かる? ねえ?」
「シリアルでも食ってろ!」

 それ以上痩せてどうすんだっての。成長期だろ、おまえ。太りたくないのはわかるけどさ。部活で走り回ってるエネルギーはどこからでてるんだろうね?

「ホラあ、早くしてよ。ご飯食べたら、お風呂入って、そんで新作のエロゲーやるんだからさあ」
「へいへい」

 ここで抵抗しても機嫌が悪くなるだけなので、俺はソファを後にして台所へ向かった。
 桐乃は聞いてもいないのに新作エロゲーについて熱く語っている。対戦ものらしいので、どうやら俺も付き合わされるらしい。カンベンしてくれよ。

「さて、と……」

 読モな妹サマはヘルシーな料理がご所望らしい。ローカロリーつっても良くわからんが野菜食わせとけばいいんだろ。それでいて男子高校生の腹を満たすもの……難題だな。俺は肉が食いたいんだがなぁ。

 とりあえず米を研いで炊飯器にセットする。冷蔵庫を覗いてみるとそれなりに材料は揃っていた。冷凍庫にカレーが残っていたがこれは見なかったことにしよう。
 自分のエプロンなんて持ってないので、お袋がいつも使っているやつをつける。丈が短いが仕方あるまい。

「ぷっ……くくく……」

 視界の隅で笑いをこらえてるやつがいるが無視無視。ふたたび冷蔵庫を開ける。

 絹ごし豆腐があったのでこれで一品作ることにする。ヘルシーったら豆腐だろう。
 容器から取り出し、一丁を八等分に切る。キッチンペーパーで包んで軽く重しをする。
 皮を剥いた玉ねぎをスライス。胡瓜はピーラーで軽く皮を剥いて千切りにする。レタスはちぎって水にさらしておく。ちなみにレタスに包丁を使わないのがポイントだ。

 大きめの皿にレタスを敷いて、充分に水気を切った豆腐をのせる。
 スライスした玉ねぎをよく絞ってから胡瓜とともに豆腐が見えないくらいにどっさりとのっける。大葉を何枚か刻んで貝割れ大根と混ぜて頂上に散らした。ふむイイ色合いだ。

 小さめのフライパンに胡麻油を多めに入れて、そこにしらす干しを一握り放り込む。あまり固くなりすぎないよう低い温度でしらすを揚げる。きつね色になったら頃合いだ。熱々のうちに揚げたしらすをごま油ごと豆腐にぶっかける。これで豆腐さらだの出来上がり。
 取り分けるための小皿も用意する。

 ご飯が炊き上がるにはまだ時間がかかるだろう。もう何品か作るか。一汁三菜というしな。
 みそ汁は用意するとして、さてメインはなんにしよう?

「ねー、お腹すいたー。まだー?」

 行儀悪くもダイニングテーブルでダレている桐乃が声を上げる。作り始めてまだ十分ぐらいしかたってねえよ。お前は我慢のきかないガキかっつーの。

「だってお腹すいたんだもん」
「しょうがねえな……」

 エサを待つ雛鳥じゃないんだからちっとは手伝おうとか考えろよな、まったく。
 仕方がないのでいま作ったばかりの豆腐サラダを持って行ってやる。ホントはよーく冷やしたほうが旨いんだがな。

「なにこれ、豆腐に野菜のっけたダケじゃん」

 テーブルに置くと妹サマはさっそく文句をたれた。
 こんなのあたしだって作れるよ、とご不満顔である。まったくなんて言い草だろうね。んならテメェが作れよ――と言いたいところだが。

「まあそう言わずに食べてみろって。ポン酢よりは醤油がオススメだな」
「なんかエラそう……」

 桐乃は不機嫌そうにしながらも豆腐を小皿に分けると言われた通りに醤油を垂らした。

「……いただきます」
「おう」
 
 桐乃は『お腹が減ってるから仕方なく食べてあげるのよ、こんなので誤魔化さないでよね』なんてオーラを出しながら豆腐を口に入れた。すると表情が変わった。

「……なにコレ、すっごくおいしいんですけど……」

 おーおー、目を丸くして驚いている。

「どうして? ただの豆腐でしょコレ。なんでこんなにおいしいの?」

 桐乃は二口、三口と食べながらどうしてどうしてと不思議がっている。

「どっかの有名な豆腐屋から取り寄せたの?」
「いんや。いつものスーパーで売ってる豆腐だよ」
「うそ……」

 信じらんない、なんて呟く桐乃。
 まあなんだ。相性がいいものを組み合わせれば相乗効果で旨くなるのさ。たぶんな。

しらすカリカリしてていいアクセントになってる。へえ、あんたやるじゃん」

 なんとお褒めの言葉を頂いた。感涙にむせび泣くところだな。

 そんな話をしながらも俺は手を動かしている。作っていたのはじゃがいものキンピラだ。
千切りしたじゃがいもと人参をごま油で炒め、砂糖と醤油で味付けをする。汁気がなくなれば出来上がりだ。ゴボウほどの旨みはないが火の通りが早いので手早く作れる。仕上げにすりゴマを大量に振ってテーブルへ。

「なんだか胡麻ばっかり」
「うるせ。胡麻は体にいいんだよ」

 食欲もそそるしな。
 さて、メインの料理だが……。そういえばこのまえ麻奈美の家で見た料理の本に面白いのがあったな。

「これもおいしいね。きんぴら」
「そりゃどーも」

 まずゆで卵を作る。半熟がいいので適当なところで火を止め、粗熱をとってからゆで卵の殻をむく。ちなみに熱湯から茹で始めると殻が剥きやすいんだぜ。おばあちゃんの知恵だ。

 缶詰のホワイトソースを開けてガラスの器に移し替え、白ワインとマスタード、塩コショウを加える。電子レンジで温めると簡単クリームソースの出来上がりだ。香り付けのローリエがないのが残念だ。

 茹でたほうれん草を白いプレート皿に盛りその真ん中にゆで卵を丸のままのせる。めんどくさいんじゃないぞ。こういう料理なんだ。卵が転がらないようほうれん草を中央に寄せる。最後にクリームソースを皿に絵を描く様に垂らして刻んだパセリを散らすと出来上がり。

「へぇ、フランス料理みたい」

 おお、感心している。

「でもゆで卵はなくない? ふつうお魚か鶏肉でしょ?」
「おまえなぁ、ゆで卵を馬鹿にするなよ。美味しんぼでも至高と究極の最初の対決はゆで卵の料理だったんだからな」

 それにてめーが肉は嫌だっていったんじゃねえか。
 
「そんなこと一言も言っていないじゃん。太るようなのは嫌だっていったけど」

 そうだったか?
 桐乃はぶつぶつ言いながらもゆで卵にソースを絡めて口に運んだ。

「どうだ?」
「おいしいけど……」
「なんだよ?」
「おかずになんなくない?」

 ……そーだね。
 なに考えて作ったんだろうな、俺。
 仕方がないのでパックの佃煮やら漬物やらを出しておく。なんだか敗北感があるよ…。

 そんなやりとりをしているあいだにも料理の手は休めない。最後はみそ汁だ。いりこの出汁はとってあるからあとは具だが……。冷蔵庫にあった大根ともやしのどちらにするか悩んでもやしにすることにした。ついでにわかめも足しておこう。

 俺は冷蔵庫からいつもの味噌を取り出そうとして奥に珍しいものを見つけた。おおこんなものが。お袋め、隠していたのか?

 炊飯器が軽快なメロディを奏でて、ご飯が炊けたことを教える。よしよしいいタイミングだ。炊きたての御飯の香りを楽しみながら茶碗によそう。おっと桐乃は半分ぐらいだったか。

「ほれ、ご飯とみそ汁」
「ん」

 いろいろ頬張っていた妹は鼻だけで返事をする。テーブルの上の料理はけっこう減っている。ふたり分だから量もあったはずだが順調に消化してやがる。カロリーがどうとか言ってたくせにな。俺の分残しとけよ。
 みそ汁を啜った妹は、うま、と呟いた。

「なにコレ、いつもと味が違うんだけど」
「仙台味噌だ。味噌の中ではいちばんウマいんだよな。煮てよし焼いてよしだがやっぱりみそ汁が一番だよな。なんでお袋これ使わねぇんだろ。一番奥にしまい込んであったぞ」
「買って忘れてたんじゃない?」

 それはあり得るな。意外とズボラだからな。あのひと。
 俺も自分の分を用意して席に座った。テーブルの上の料理は半分以上無くなっている。

「おまえ、食べ過ぎじゃね?」
「う、うっさい。しょうがないじゃない。お腹すいてたんだから……」
「いいけどな、別に」

 食えないだの、マズイだのと文句たれられるよりはマシだろう。俺の料理のスキルが高いとは思わないが(少なくとも麻奈美には及ばない)桐乃を不満に思わせないだけのものは出来たらしい。友達同士でお洒落なレストラン巡りをしてるだけあってコイツは舌だけは肥えてるらしいしな。
 これは愚痴だが、なんで女の子たちが好むレストランてのは量が少ないのかね。せめて大盛りを頼もうとしてなんど桐乃に冷たい目で見られたことか。
 俺が食事を始めると、ねえ、と桐乃が呼んだ。

「――あんた、料理、できたんだね」
「まあな」
「誰に教えてもらったの? やっぱり地味子?」
「地味子って言うな。まあそれもあるが基本を習ったのは麻奈美の婆ちゃんからだな」
「ふぅん」

 なんだろね。反応がいやにしおらしいじゃないか。

「いままでどうして作らなかったの? あの停電のときだって惣菜買ってきてたし」
「そりゃだって――」

 正直に言いかけて俺は言葉を飲み込んだ。

「面倒だったからわざわざ作ろうと思わなかっただけだよ」

 親父やお袋なら俺が作ったものでも興味本位で食べてくれるだろう。でもお前はどうだよ。
 いまなら文句言いながらでも食べてくれるだろう。今日みたいにな。でもあの頃のおまえならきっと口もつけなかったんじゃないか。バカみたいとか言ってさ。そんな相手に作ってやろうなんて思わないだろう?
 ――なんてことは口にしない。自他共に認める鈍感な俺だが、それくらいのデリカシーはあるのだ。

「あんた、なんかムカつくこと考えてない?」
「はぁ?」
「わたしのことバカにしてんでしょ」
「なんでだよ」

 眼光が怖いぞ。

「だって……だって……くっ……」

 言いよどむ桐乃。怒った顔から一転、こんどはなんだか悔しそうにしている。

 まあ気持ちはわからんでもない。俺が料理ができるってことがコイツにはショックだったんだろう。
 完璧超人の妹だが家事全般については得意とはいえないようだしな。もちろんひと通りのことはできるんだろうが決定的に経験が足りていないんだろう。掃除や洗濯ならまだしも料理は場数だからな。

 部活やモデル業、それに勉強。どうみても日常的に家事を手伝う時間などあるはずがない。大事な趣味の時間を削るわけにもいかないだろうし友人と遊ぶ時間も必要だ。むしろどうやってすべてをちゃんとこなしてんのかこっちが聞きたいぐらいだ。

「むむむ……」

 桐乃はなにやら呟きながら煩悶としている。
 悔しいのはわかったがそこまで悩まなくてもいいだろと思う。いいじゃないかひとつくらい不得手なものがあっても。そのほうが何でもできるよりよっぽど可愛げがあると思うんだが。

「……なんかムカつくなぁ。覚えときなさいよ、そのうち見返して――」

 と、いきなり言葉を止めた桐乃が、なにかに気づいたような顔で俺を睨みつけている。
 おいおい今度はなんだよ。

「ねぇ、聞きたいことがあるんだけど」

 なんでそんなドスのきいた声なんだ。俺、なんか悪いこと言ったかな?

「な、なんだよ」
「兄貴、大学にはこの家から通うの?」
「その予定だけど――それがどうかしたのか」
「ホント?」
「なんだよ。そんな嘘ついてもしかたないだろ」
「う、うん。そうだよね。うん、ちょっと聞いてみただけ」

 桐乃はそんな答えを返すと席を立ちリビングのソファーに横になった。テレビでも見るのかと思ったがそんな様子もない。さっきの怒ったような顔はなんだったんだ?

「おい、食ってすぐ寝ると太るぞ」
「うっさい、バカ。ほっといてよ」

 冗談で言ったんだがお気に召さなかったらしい。だが返事をしないほど腹を立てているわけでもないらしい。なんだろうね、いったい。
まあいいさ。桐乃の気まぐれなんて今に始まったことじゃない。

「……豆腐サラダほとんど食いやがったな」

 一丁すべて食べ尽くすとか、どんだけだよ。太っちゃいけないんじゃなかったのか?

「ふー」

 しばらくして食事を終えた俺は一息ついた。料理は嫌いじゃないが後片付けってのが面倒なんだよな。うちにも食器洗浄機入れてくんねえかな。使ったことなんてないが楽なんだろ、あれって。お袋が頼めば親父は嫌とはいわないだろうにな。
 そんなことを思っているとソファーでごろごろしていた桐乃がいきなり立ち上がった。

「ね、コーヒー飲む?」
「おお……なんだ、どうしたんだ突然?」
「御飯作ってくれたからね。そのお礼。いらないなら別にイイんだけど…」
「いやいやいや、いります。ください。お願いします」

 桐乃の言葉を遮って俺は言った。なんだよそんな寂しそうな顔すんなよ。びっくりするだろうが……。

「ん」

 桐乃は満足そうに頷くと台所に向かった。戸棚を開けはじめたのでなにをするのかと思っていたら、奥からコーヒーミルとドリッパーを取り出している。なんだコイツちゃんと淹れるつもりなのか。俺はまたインスタントだろうと思っていたんだが……。
 お湯を沸かしながらコーヒー豆を取り出す桐乃。なかなか様になってるな。それにしても桐乃は紅茶派だと思ってたんだがな。

「おまえ、えらく手際がいいけどコーヒーなんて飲むの?」
「んー、あたしは紅茶党だけどね。たまーにお父さんに淹れてあげてるよ」

 へえ。親父にね。知らなかったな。コイツも親父には素直なんだよな。お袋とも母娘っていうより友達みたいだし。――ふと思ったけど、桐乃にひどいセリフ投げられるのって俺だけじゃね?

 ……あ、いや黒猫にもか。
 でもあれってケンカしてるっつうより戯れてるって言う方が的を射てる気がするな。

 考えてみればコイツ、表の友達にみせる表情と裏の友達にみせる表情も違うんだよな。態度も言葉使いも違うし。よくあんなに使い分けられるよな。俺なんかじゃ絶対無理だな。女ってこええよ。

「ねえ」
「な、なんだよ?」

 いきなり桐乃が話しかけてきたのでドキリとする。心が読まれたのかと思っちまったぜ。
 キッチンカウンターの向こうで桐乃はこっちを見ずにそっぽを向いていた。コーヒーの芳しい香りが部屋に広がっている。

「兄貴の料理おいしかった」
「お、おお。そうか……」

 なんだよ。素直に褒められると照れるじゃねぇか。

「また作ってくれる?」

 桐乃はちらりと俺をみた。
 そんな期待に満ちた瞳で言われたら、あいよ、と頷く以外どうしろってんだよ。まったく――。

 ちなみに桐乃が淹れてくれたコーヒーは俺にはちょっと苦かったな。
 まだまだお子さまってことかね。俺も。




fin