『妹オーディション』その2

 界隈のBBSだとか日記をつらつら読むに、どうも乃梨子が泣いた場面があまりに唐突だったように思える人が多いらしい。確かに伏線が少ないし、乃梨子瞳子の関わりを示すエピソードもない。故に瞳子に対する乃梨子の感情が計りきれなかったのはやむを得ないとは思う。
 作中に現れたのは「特別でないただの一日」での演劇部でなにかあったことを悟り、息せき切って祐巳に相談する乃梨子という一場面だろうか。相談した後、彼女は自分でもなぜ祐巳に伝えたのか不思議に思っている。結局、乃梨子も読者も一緒なのだ。置いてきぼりにされるのも仕方ない。語られるのはこれからなのだから。伏線はいくつもあったけど(笑
 それと「インライブラリー」に収録されている瞳子の内面を垣間見せた「ジョアナ」
 「特別〜」での瞳子の態度が、ツンデレのデレに近くなってきていたと考えていたひとは、そのあまりの温度の低さに驚いたと聞いている。気持ちは判らないでもないが、あまりに記述を鵜呑みにしすぎだろう。あれが瞳子の“正直”な内面だと思っていると必ず混乱する。だから深読みなんて、しなくても良いのにしてしまうのだろう。
 ようするに彼女は内面すら偽れる“女優”なのだ。言い換えれば自分さえ騙す天の邪鬼。一人称だからって内面を素直に書いてる訳じゃないのだから。作者は。
「このひとはなにを言っているのかしら」
 自らを「瞳子」と呼ぶとき、「私」と呼ぶとき、意図的に変えている称の意味を読み取ればそう難しくはないと思う。
 
 ……なんて偉そうに語る必要ないよなぁ。わかってるひとにはいまさらだろうし。言いたいのは行間読めよ、ということで(笑